アマチュアオーケストラの選び方

日本には多くのアマチュア・オーケストラがあります。どのアマオケも弦楽器は不足気味で、ヴィオラやコントラバスは特にその傾向が強いですね。海外でもアマチュア・オーケストラは多いようです。詳しいことは分かりませんが、アメリカ、イギリス、ドイツなど、アマチュア・オーケストラの活動がさかんです。その他の地域もYouTubeを見るとかなり多いことが分かります。

アマチュア・オーケストラの種類

特にアマオケに種類があるわけでは無いですが、結成した時の目標や運営のやり方など、いくつかの種類に分けて考えておくと理解しやすいです。

市民オーケストラ

いわゆる普通のアマチュア・オーケストラです。区や市など、地名を冠したアマオケが多いです。地域に根差した活動を行うとともに、その自治体の文化担当と深い関係を構築している楽団もあります。

地名を冠していても市民オーケストラとは言えない場合もあるため、名前では判断できないです。

大学OBのオーケストラ

これもアマチュア・オーケストラで多い形態です。オケを作った時には特定の大学のOBが多いことが特徴ですが、その後の団員募集は大学とは関係なく、幅広く行われているオケが多いです。比較的民主的な運営がされていることが多く、出発点は大学OBでも、市民オーケストラを目指している場合も多いです。最初の団員をある程度まとまった人数揃えるには、大学OBなどの母体があると有利です。

もう一つは地域名を冠していない大学OBオケで、これは本当に特定の大学OBが中心に運営されていることが多いです。演奏レヴェルも高いオケが多いですね。

作曲家名を冠したアマオケ

市民オケではなかなか演奏できない少しマニアックなレパートリーを演奏したい、という人が集まって結成したアマオケです。ただし、団の名前になっていても、実際は市民オケと変わらないレパートリーのオケもあります。

例えば大田区ハイドン管弦楽団という歴史あるアマオケがありますが、ハイドンも演奏しますが、ロマン派の曲も積極的に取り上げています。

音楽用語を冠したアマオケ

東京や大阪など、大都市圏では多くの地名は既に使われています。そこで、音楽関連の用語や有名な歌詞などを冠したアマオケも多いです。そのため、アレグロとかフェルマータなど、音楽用語を冠したオケもあります。普通の市民オケの場合が多いようですが、特定のジャンルに特化したオケもあります。

指揮者や音楽指導者が作ったアマオケ

プロ、あるいはセミプロの指揮者や、音楽指導者が作ったアマオケも意外と多くあります。指揮者自身が結成する場合と、市民オケに指導者として呼ばれる場合があります。レヴェルは様々ですが、著名な指揮者や指導者の場合はレヴェルが高い奏者が集まり、ハイレヴェルなアマオケになります。CDを出すくらいレヴェルが高かったりします。

神奈川県の藤沢市民交響楽団は、著名な音楽評論家を呼び、活動を行っていました。藤沢市民オペラなど、幅広く精力的に取り組んできた市民オーケストラです。

一方、指揮者が結成したアマオケは、基本的にその指揮者や指導者が指導するため、ある意味音楽教室に近い雰囲気かも知れません。その場合、選曲もあまり民主的ではなく、いわゆる市民オーケストラとは違います。名前に地名を冠している場合も多いため、市民オケに見えますが、運営方法が大分異なるので規約を見ると分かります。

プロの指揮者や指導者を中心に結成して、その後、10年くらいで市民オーケストラになった楽団もあります。アマオケにも歴史あり、ですね。

バロック・オーケストラ

バロック・アンサンブルやバロック・オケはこのケースがほとんどです。人口の多い東京であっても一般に団員募集するだけだとバロック楽器を持っている人は少ないため団員が集まりません。音楽教室や弟子たちを中心にして人伝(ひとづて)で団員を集めていく方式ですね。
もちろん一般にも募集しているアマオケもあって、その場合は自ら入団することも可能です。例えば、オーケストラ・オン・ピリオド・トウキョウはバロック・オケですが、一般に団員募集もしています。

演奏会の頻度

多くのアマオケは年2回の演奏会を行っています。特に決まりはありませんが、実際入団してみると仕事をしながら演奏会を行う場合、大体この位が丁度良いといえます。練習期間が短いと曲をまとめきれませんし、演奏会の間隔が長すぎるとダレてしまって、出席率が落ちたりするものです。
ベテランで上手い人は、複数のアマオケに所属したり、エキストラで手伝ったりして、さらに多くの演奏会に参加しています。
ちなみに多くのアマオケでは、アンサンブルコンサートもあり、これは団内で行うことも多いですが、コンサート形式でお客さんを入れて行うオケもあります。また近隣の小中学校や地域の音楽祭などで少し小規模なコンサートを行う団体もあります。幼稚園でクリスマス・コンサートなどを行う所もありますね。

団費

団費は相場としては月3000円前後ですね。しかし、そのオケの練習頻度や練習場所、指揮者のグレードによっても変わってきます。
また室内管弦楽団などは人数が少ないため、相対的に割高になりがちです。色々な事情を考慮した上で、ある程度の資産も保ち、安定運営できる金額になります。
団費については規約等で決めているため、最初から決まっていて見直しを行っていないこともあります。ただ指導者の費用が割高で、団費が高くなるケースもありますので、指揮者や指導者が目当てで入団するのでなければコスパの良いアマオケが良いですね。

音楽監督や常任指揮者、指導者との関係

通常、アマオケは客演指揮者、トレーナーなど、プロの音楽家が指導しています。アマチュアの指揮者で練習している団体もありますが、吹奏楽団などと比べ、スキルが高い指導者に依頼する場合が多いです。
音楽監督や常任指揮者などの職位が存在する楽団もあります。この場合、プロの音楽家が団の運営に入り込んでくることになります。一般的なサラリーマンや主婦の感覚からすると、プロの音楽家は文化のギャップがあります。団員は趣味でやっていますが、 プロの音楽家 は仕事としてやっています。比較的クリーンなサラリーマンに比べると、プロの音楽家は(才能と)コネで仕事を得ているのです。
音楽監督や常任指揮者が自分の弟子やコネを通じてトレーナーを選んだり、練習指揮者を選んだりしてきます。特に練習指揮者は若手だったり、単に弟子だから、という理由で選ばれることが多いです。そうやって紹介しあって成り立っている業界なんです。自営業の方は理解できると思いますが、日頃から「コンプライアンス」などを重視している大企業に勤めている団員も多いですしね。
簡単に価値観が衝突して、コネ中心の音楽業界に住んでいる指導者と対立したりすることもあります。この辺りは入団してしばらくしないと分からないことも多いですね。運営に参加して初めて分かることもあります。良い指導者はオケの団員の要望を良く考慮して、あまり運営に深入りしてこないものです。

演奏会に行ってみよう

入ってみたいアマオケの目星を付けたら、一度は演奏会を聴きに行くのが良いと思います。
演奏会に行くと色々なことが分かります。

・曲目の選び方
・会場の選び方
・チケットの値段
・お客さんの数や客層
・どのくらいの演奏レヴェルか
・エキストラは多いか
などが分かる場合が多いです。プログラムに書いてある挨拶文や曲目紹介の文章でもそのアマオケのキャラクターが分かるかも知れません。
多くのアマオケは出演者のリストを付けています。そこに、パートリーダーやエキストラのマークがついていて、どの位、エキストラが居るのかわかることもあります。

演奏会の曲目

過去の演奏会の曲目はよく確認しておくと良いです。また選曲の方法などを見学時に聞いてみるのも良い、と思います。
もし、貴方が初めてアマオケに入るなら、ベートーヴェンあたりをしっかり取り上げているアマオケをお薦めします。ベートーヴェンはやはり楽聖と呼ばれるだけあって、アマチュアが取り組んでも充実した演奏ができます。もしかすると、そのアマオケは発展途上で、これからロマン派など大規模な作品に取り組んで行くかもしれませんが、あまりオケを変えるのは良くないので、出来ればオケと一緒に成長できると良いです。
また、ブルックナー、マーラー、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチなど、難易度が高い曲を取り上げている場合は、そのオケは初心者向けではありません。上手い人なら歓迎されますが、仮に入団出来てもあまり居心地が良くないかも知れません。
ある程度、ベートーヴェンやブラームスなどが弾けるようになったら、好きなら難しめの曲を取り上げているアマオケに入団するのも良いかも知れません。もし、貴方がちょっとマニアックでその曲に詳しければ、同じ趣向を持つ人同士で楽しく過ごせるかも知れませんよ。

演奏会のチケットの価格

アマチュアの市民オーケストラでは、演奏会のチケットは1000円前後で収益源にはなりません。大体は団員に10枚くらいチケットを無料で配ったりして、団員が1000円でチケットを売れば、それで演奏会費用の個人負担が少し減ることになります。

チケットが2000円以上するアマオケは敷居が高めです。自分が演奏して2000円の価値がある演奏会ができるでしょうか。初心者だと「無料が良い」という人が多そうですが、大体有料にしているので1000円前後が多いです。実際は団員がチケットを配ることも多いため、チケットの価格が高くても実質的には無料に近い場合が多いですけれど。レヴェルの高いアマオケはチケットの収益で運営している場合もありますが、それほど多くはありません。

会場の音響

アマオケの会場選びはなかなか大変です。東京でも音響の良いホールは大人気で、抽選でもなかなか当たりません。自治体が主催の音楽祭などでなければ、歴史の長い市民オケであっても抽選で会場を確保しないといけないのです。
一方、高いホールで演奏会を開く団体もあります。例えば、サントリー・ホールミューザ川崎などです。これらのホールはとても費用が高いです。一方、横浜みなとみらいホールは一見パイプオルガンもあって高そうですが、意外と安めです。自治体やその関連団体が管理しているホールは、良いホールでも比較的リーズナブルです。

また、定期演奏会の代わりに自治体主催の音楽祭に参加するアマオケもあります。地名を冠したアマオケで一定の条件を満たせば、ホール代は自治体の関連団体が持ってくれたりします。アマオケは1回の演奏会で一人当たり2万円位の参加費が必要になりますが、音楽祭などをうまく活用して良いホールで割安で演奏会を行っているオケもあります。初心者やそれほどレヴェルが高くない人は、そのような市民オケがお薦めです。音響の良い会場で割安な演奏会費で活動できます。
もちろん、上手い人でサントリー・ホールのような世界屈指の音響のホールで弾きたい人もいると思います。その場合は、高級な会場として使っているアマオケを選べますが、会場費は大分違うものなので、無理はしない方が良いと思います。

エキストラの多さ

エキストラについての記載がない出演者リストを載せている場合は、既に満席に近くてエキストラが居ない場合と、エキストラが多すぎて書きにくい、という場合に分かれます。エキストラが多いこと自体が良いとか悪いとか直接判断を下せるものでもありません。結成されて数年のオケなら、特に弦楽セクションはエキストラが多いものです。技術レヴェルの高いエキストラを上手く配置して、初心者や技量が低い人をサポートしているアマオケもあります。初心者のことを考えてくれるオケは雰囲気が良い場合が多いですし、将来団員が増えて発展する可能性も高いです。

エキストラが多くてもきちんと出演者リストに記載しているアマオケの方が好感が持てますね。ただ普段練習に参加するメンバーが少ないと、音が薄くて弾きにくい場合もありますし、ヴァイオリンやチェロ、ヴィオラなど、同じ音を弾いている人がいない場合もあります。初心者だと遠慮してしまいますね。それでも頑張って練習して、出席率が良ければオケのメンバーから喜ばれると思います。

エキストラが多めのオケは、本番直前になって大分演奏が変わってくる傾向にあります。それまで折角まとめてきたのに、本番が近くなってエキストラが増えたら全然違う音楽になってしまった、ということもあるので、そこを気にする方は念頭に置いておくと良いです。

まとめ

アマチュア・オーケストラは一度入団するとある程度の期間は、そのオケでお世話になると思います。数年間そのアマオケで楽しんでやっていけるか、という視点でじっくり選ぶと良いと思います。
運営のやり方や団の雰囲気は、オケによってだいぶ異なります。もし初めて入団する場合は、初心者を気持ちよく受け入れてくれる雰囲気があるか、を見てみましょう。やはりそのアマオケでの活動が楽しくなければ、長くは続かないです。
しかし、万人に合うオケというのはなく、例えば技術レヴェルを重視した方が楽しく活動できる人もいれば、演奏レヴェルよりは団の雰囲気が良くて飲み会が楽しい方が良いという方もいると思います。その辺りの価値観がアマオケ側と合っていると、愛着がわいて長く活動できます。アマオケ側から見ても、長くメンバーとして居てくれるとしっかりアンサンブルの練習が出来て響きが安定してきますので、歓迎されると思います。