コレルリをきちんと弾いてみよう

スズキの教本に出てくるコレルリ(コレッリ)のヴァイオリン・ソナタですが、弾いてみてどうだったでしょうか。多分「シンプルな曲だなぁ」とか「何か物足りなくて、あんまり面白くないかなぁ?」と思いつつ、意外と簡単に弾けたのではないか、と思います。

コレルリはどんな作曲家なのか

アルカンジェロ・コレルリは1653年に生まれたイタリア人のヴァイオリニスト、作曲家です。コレルリはバロック期に初めてヴァイオリンを芸術的な楽器に高めた作曲家・演奏家として知られています。

ヴァイオリン自体は15世紀~16世紀にはアマティやストラディバリウスも登場し、ヴァイオリンの楽器としての形態は確立されています。ただヴァイオリン曲は少ない状況でした。

1700年にローマで12曲(1ダース)をワンセットにしたヴァイオリン・ソナタ作品5を出版し、その人気はヨーロッパ中に及びました。最後の第12番「ラ・フォリア」は当時から有名でした。ヴァイオリン・ソナタとしては異例のベストセラーとなりました。

またコレルリは楽団を創設し、自作の合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)を演奏し、その形式を確立しました。若いヘンデルはイタリアにオペラ作曲の修行に来ていましたが、コレルリの楽団の演奏を聴いて、コレルリ自身と話もしています。

コレルリはあまり技巧的な方向には行かず、第3ポジションまでしか使わなかったようです。コレルリは合奏協奏曲作品6を出版しましたが、こちらも12曲で構成され、第8番は「クリスマス・コンチェルト」として有名です。

またトリオ・ソナタ作品1(ヴァイオリン2本、チェンバロ)も有名で、ヴァイオリンを弾く人なら知っておきたい曲です。

ヴィヴァルディやヘンデルなど後世の作曲家は、コレルリに敬意を表して12曲で出版しています。特にヘンデルの合奏協奏曲は「作品6」としており、コレルリの影響が大きいです。

弟子にはフランチェスコ・ジェミニアーニやピエトロ・ロカテッリらがいます。ジェミニアーニは、コレルリのヴァイオリン・ソナタ作品5を合奏協奏曲に編曲しています。

コレルリの作風

コレルリの多くの作品はヴァイオリン曲、合奏協奏曲等、弦楽器のための音楽です。オペラも作曲していませんし、管楽器のための作品すらトランペット・ソナタが死後に発見された程度です。

作品数自体も同時代の作曲家に比べて少ないです。いずれも完成度が高い作品ばかりで、後世のベートーヴェンのようにひとつの作品に大きな労力をかけていました

コレルリは人気が高く、多くの貴族のパトロンを持ち、晩年は作曲する必要もないほど裕福になりました。

バロック時代の演奏

バロック期は楽譜に対して、独自のアドリブやアレンジ(装飾)を加えて演奏することが普通でした。コレルリのソナタは装飾を前提に作曲されているので、シンプルな所があるのです。ジャズと同じでアドリブや装飾にもセンスが必要です。あまり音楽に馴染みがないアマチュア愛好家に向けて、装飾を加えた楽譜も多数出版されています。それらの楽譜が今でも残っているため、当時のアドリブや装飾の仕方がある程度分かります。

YouTubeにもいくつか演奏がアップロードされていますが、繰り返しの2度目にアドリブや装飾が入っています。これらはバロック時代の楽譜を元に装飾の方法を勉強して、その流儀で演奏しています。スズキの教本で感じた「シンプルさ」は、アドリブや装飾を後から演奏者が付けることを前提にしたもので、曲によっては骨組みしかないものもあります。

バロック風に弾くととても味が出る

折角ヴァイオリンを弾いているので、コレルリもしっかり魅力的に弾きたいですね。アドリブや装飾はすぐには出来ませんし、コレルリ当時の本格的なバロック弓を使うと味が出ますが、現代の弓とは奏法が異なるため、急には使えません。

ただ、現代の弓に近い要領で弾けるバロック弓もあり、5万円程度で売っています。これでも今の弓よりはずっとコレルリらしい雰囲気が出ます。ヘンデルやバッハでも使えますので、良いバロック弓を一本もっていると発表会などで使えると思います。弾き方については、別のページで書いてみたいと思います。

また是非ピュア・ガット弦を試してみて欲しいですね。これは別のページで紹介しましたが、柔らかく暖かみのある音色で、現代のオリーブオイドクサなどのガット弦ともまた違います。ただ、これを使う時は、ピッチが半音下がるため、伴奏はチェンバロが良いですね。ピアノだとピッチが高すぎて、弦が切れやすいです。

CDによっては、チェンバロの伴奏に加えて、チェロが入っているものがあります。当時の伴奏は通奏低音と呼ばれ、和音の番号だけ書いてあって、その和音で即興で伴奏を付けていました。通奏低音で使う楽器も細かい指定はなく、チェンバロやオルガンが多かったですが、チェロが入ったり、テオルボ(リュートの仲間)が入ったりしました。

まとめ

コレルリのヴァイオリン・ソナタは、ヴァイオリンという楽器の可能性を大きく高めた超名曲です。現代のヴァイオリンで演奏すると、艶やかになってしまい、コレルリらしい魅力が出にくいです。艶やかなモダン楽器の演奏でも良い演奏は沢山ありますが、バロック・ヴァイオリンの演奏を聴いてみてください。かなりイメージが変わると思います。

そんなバロック風のイメージのまま自分でも弾いてみたい場合は、ピュアガット弦に張り替え、バロック弓を使うと良いです。伴奏がチェンバロであれば、とても雰囲気が出てきて、コレルリの素晴らしさに目覚めると思いますよ。